Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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きゅうしゅじん

旧主人・芽生

島崎 藤村

Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme

Aozora Bunko

庭の隅(すみ)には枝の細長い木犀(もくせい)の樹があった。まばらな蔭は僅かにそこに落ちていた。軒からその枝へ簾(すだれ)を渡して、熱い土のいきれの中で、家内は張物をしたり、洗濯したりした。

「あれ黒がいけません」

こう言いながら、お菊は穢(きたな)い宿無し犬に追われて来た。

「菊ちゃん、早く逃げていらッしゃい……なんだってそんな大きな下駄(かっこ)を穿(は)くんですねえ」

と言って、家内は腰を延ばした。そして苦しそうな息づかいをした。高く前掛を〆(し)めてはいたが、最早醜く成りかけた身体の形は隠されずにある。

お房の泣く声が聞えた。家内は取縋(とりすが)る妹の方をそこへ押除(おしの)けるようにした。「あ、房ちゃんが復た溝(どぶ)へ陥落(おっこ)ちた」と言って顔を顰(しか)めていると、お房は近所の娘に連れられながら、着物を泥だらけにして泣いてやって来た。

「どうしてそう毎日々々衣服(おべべ)を汚すんだろう」

と家内が言ったので、お房はもう身を竦(すく)めるようにして、無理やりに縁側の方へ連れて行かれた。

「母さん、御免……」

こうお房は拝むように言った。