Japanische Klassiker mit Furigana
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きゅうしゅじん
旧主人・芽生
島崎 藤村
Lesen Sie 旧主人・芽生 (きゅうしゅじん) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 149.813 Zeichen · 302 Bildschirme
家内は又、この娘を懲(こ)らさないうちは置かなかった。
「房(ふう)ちゃん、どうなさいました」
と、お房の泣声を聞きつけて、そこへ井戸を隔てて住む「叔母さん」が提げにやって来た。この人はここから麹町(こうじまち)の小学校へ通う女教師である。最早(もう)中学へ行くほどの子息(むすこ)がある。
「衣服(おべべ)を泥になんか成すっちゃいけませんよ。これから母さんの言うことをよく聞くんですよ」
と裏の「叔母さん」は沈着(おちつ)いた、深切な調子で、生徒に物を言い含めるように言った。お房は洗濯した単衣(ひとえもの)に着更えさせて貰って、やがて復たぷいと駈出(かけだ)して行った。
「母さん、何か……母さん、何か……」
とお菊はネダリ始めた。何か貰わないうちは母の側を離れなかった。
「泣かなくても、進(あ)げますよ」と家内は叱るように言った。「お煎餅(せんべ)ですよ」
「お煎餅、嫌(いや)――アンコが好い」
「アンコなんか不可(いけ)ません。あんまり食べたがるもんだから、それで虫が出るんですよ――嫌ならお止しなさい」
と母に言われて、お菊は不承々々に煎餅を分けて貰った。
その晩は早く夕飯を済ました。