Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
息もつかぬ強行軍である、ひた押しに進んで三日めの夕方には、いよいよ梟谷のてまえにある草苅峠へ着いた。
半九郎はそこで行軍をとめたうえ、ふた組の斥候をだして敵の様子をさぐらせた。
梟谷は『袋谷』という意味にも通ずる、左には月山が裾をひき、右手には羽黒山がせまっている、そのふところへ深く、まるで袋のようなかたちになっている谷がそれだ。……そしてそこには数百年このかた土生一族と呼ばれる土着の豪族が住んでいる。命しらずの勇ましい人々で、けわしい土地に砦をきずき、外からくる敵は一歩も入れまいとしているのだ。
斥候は夜になってからもどった。
「敵の様子をさぐってまいりました。梟谷にはひとりの人間もおりません」
思いがけぬ知らせでみんなもおどろいた。
「部落のなかまで見てきましたが、まるで人かげがなく、家々はがらあきで、それこそ犬の子一ぴきもいません」
「砦の方にも誰もいないようです」
みんなあきれて眼を見合わせた。……銃隊長の石岡吉次郎はいきごんで、
「隊長! やつらは逃げたんです、我々のくるのを知ってかなわぬと思ったのでしょう、すぐつっこんで占領したら――」
「いや待て」