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Japanische Klassiker mit Furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme

Aozora Bunko

二の一

けれど、それをいったら父はどんなに落胆するであろう。

――おかわいそうな父さま。おゆきがもういちどそうつぶやいた時である。新庄のほうからすさまじいひづめの音が聞えてきたと思うと、馬をあおって二人の武士が店先へ現れた、――馬上の一人が手綱をしぼりながら、

「これ娘、――」

と呼びかけた、「今朝この道を武士が一人通りはしなかったか」

「あの、お侍さま……」

「いや姿はかえているかも知れぬ。見馴れぬ男が通ったかどうだ」

「今しがた一人」

とおゆきは軒先へ出て、「五郎吉馬子の馬でお商人ふうのかたが岩崎へお下りなされました、まだ杉坂までは行くまいと存じます」

「――それだ!」

とつれの者が叫んだ。

「おくれてはならぬ、追おう」

「心得た」

二人は馬首をめぐらせると、鞭をあげてまっしぐらに峠を下って行った。

二の一

日はすでに高くあがって、深い谷底を流れる谿流の音が、断崖に反響しながらさわやかに聞えてくる、森から森へなきうつる郭公の声は、それでなくてさえさびしい山中の静けさを、いっそうものわびしくするばかりであった。

――何があったのかしら。

駆け去った二騎のあとを見送って、おゆきは妙な胸騒を感じた。