Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
――しかし土生一族が、この谷間をとりかこんでいるのはまちがいないことなのだから、その様子もしっかりたしかめないうちに進軍するのはあぶないことである。
――だが命令だ、やるだけやろう。
そう覚悟をきめて、
「進軍の準備にかかれ」
と命をくだした。
「部署についている者は離れるな、敵は間近にいるんだ、油断するとやられるぞ、――篝火を消せ」
「篝火を消せ――」
命令は次から次へ伝えられた。
防備の位置についている兵を別にして、残りの者は手早く荷造をはじめた。……援軍はもうすぐ到着する、そうすればもうしめたものだ、このいやな梟谷からぬけだして、酒井軍とはなばなしい合戦ができるのだ。――兵たちは元気づいてしたくをいそいだ。
その騒のあいだに――。
砦の裏の防壁を、影のようにすばやくのりこえた者がある。少女お糸であった。
防壁を外へ出ると、爪さきのぼりになっている藪のなかを小さな野獣のように走って行った、そして三十米あまりものぼると、――両手をまるめてかさね、そっと唇へあてて、
「ほう、ほう、ほう、ほう」
と梟の鳴声をたてた。
――ほう、ほう。
右手の方で答える声がする。