Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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はるいくたび

春いくたび

山本 周五郎

Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme

Aozora Bunko

五

「どうしてそれがわかったのか」

「拙者の妹です!」

鎧武者はむろんのこと、そこにいる雑兵たちまでがあきれて眼をみはった。――伝四郎はむしろそれをほこるかのように、

「妹ではございますが、赤沢軍の百人頭である拙者にはもう他人も同じことです。お引渡し申しますからよろしくおはからいください」

「――そうか、りっぱなしかただ」

鎧武者はにやっと笑っていった。

「逃がせば逃がせるものを、よくうったえて出たな。じつはいま……貴公の小屋の外で貴公たちの問答をきいていた者があるのだ。しかしこれでいままでのうたがいはすっかりとはれるだろう」

「そうなればありがたいと存じます」

「――お兄さま!」

若菜はのどもさけよとばかりさけんだ。

「あなたはほんとうに裏切者だったのですか、あなたは妹まで……」

「この娘をひいてゆけ!」

鎧武者が若菜のさけびをさえぎってどなった。

「そして牢屋へおしこめろ」

五

暗い牢屋のなかである。

外は恐しい暴風雨である。

あれからまる一日たつ、若菜は運ばれてくる食物にも手をつけず、ひと口の水も飲まない。

牢屋のすみにじっとすわったままだ。

――兄は裏切者だった。