Japanische Klassiker mit Furigana
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はるいくたび
春いくたび
山本 周五郎
Lesen Sie 春いくたび (はるいくたび) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.094 Zeichen · 142 Bildschirme
六
だん! だん! だん!
めくらうちの弾が飛ぶ。
「――よし」
男は重傷の身を鞍のうえにおこすと、最後の力をふるって若菜の去った道とは反対の方へ馬首を向けた。――若菜を完全に逃がすために、彼は自分のからだをなげ出して敵を逆の方へさそったのである。
追手の騎馬ははたしてそのあとをおっていった。
烈風は木々をもみたて、豪雨はやみの山道にしぶきをあげている。暴風雨、暴風雨!
六
谷をくだれば大村の陣まで八粁。
若菜は必死に馬をあおった。やみのなかを真一文字に、畑も藪も、丘も小川も、馬蹄の下にふみにじりながらかけにかけた。
大村軍の木戸のまえで、
「――誰だ!」
という番士の声をきかなかったら、恐らく馬もろともに木戸へたたきつけられたことであろう。
「とまれ!」
「誰だ、どこへ行く!」
さけびながらばらばらと四、五人の番士がとびだしてきたので、若菜はぐいぐいと手綱をしぼりながら、ようやく馬をとめ、
「釜伏山の、砦へ、はいっていた隠密です」
とさけんだ。
「なに隠密だと?」
「たいせつな手紙を持ってまいりました、いそいで御本陣へおとりつぎください」
そういいながら馬をおり、あずかってきた書状を渡すと、若菜はそのままふらふらとそこへたおれてしまった。