Japanische Klassiker mit Furigana
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はるさきのあさのこと
春さきの朝のこと
小川 未明
Lesen Sie 春さきの朝のこと (はるさきのあさのこと) von 小川 未明 (おがわみめい) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N3. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N3 · Mittel · moderne Kanji und Kana · 2.951 Zeichen · 6 Bildschirme
外は寒いけれど、いいお天気でした。なんといっても、もうじき、花が咲くのです。私は、遊びにいこうと思って、門から往来へ出ました。すると、あちらにせいの高い男の人が立っています。いま時分、戦闘帽をかぶり、ゲートルをしているので、おかしく思いましたが、
「まて、この人は、復員したばかりでないのか。そして、たずねる家がわからぬのでさがしているのではないか。」
こう、考えなおすと、私は、しばらく、そのようすを見まもったのでした。どうやら、この人は、頭の上のさくらをながめているのです。
「ああ、ぶじに帰って、母国の花を見るのが、なつかしいのだろう。」
こう思うと、私は、その人の気持ちに同情して、そばへ、いきたくなりました。私はつい、近づいて、いっしょに立ちながら、枝を見あげました。いつのまにかつぼみは、びっくりするほど、大きくなっていました。下を通っても、気がつかなかったなあと、思っていると、
「つぼみのさきが赤くなりましたね。」と、ふいに、おじさんが、私に、話しかけました。
なんだか、私は、うちとけた気分になれて、
「おじさんは、いまごろ復員なさったの。」と、聞きました。