Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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げっこうのした

月光の下

田中 貢太郎

Lesen Sie 月光の下 (げっこうのした) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.047 Zeichen · 5 Bildschirme

Aozora Bunko

戸外に出て海の方を見ていた村の人の某者は、冥濛な海の果に当って、古綿をひきちぎったような雲が浮んで、それに電光がぎらぎらと燃えつくようになったのを見た。海嘯はその後からすぐ湧起って、家も人も一呑みにした。壮い漁師は、赤い手柄をかけた女房を引っ抱えるようにして裏口に出たが、白い牙を剥き出して飛びかかって来た怒濤に捲き込まれて、今度気が注いた時には、一人になって流れ往く松の枝にかきついていた。

漁師の眼には涙が湧いていた。彼はその涙の眼をまた海の方へやった。と、磯の波打際に人影の動くのが見えた。それは海の中からあがって来たように、真直にこっちへ向いて歩いている。そして、次第に近づいて来るのを見ていると、その姿はどうも女らしかった。長い青光のする頭髪は乱れて、それが肩に靡いているように見えて来た。漁師は不思議に思いながら、じっとそれを見つめていると、それが女房のように見えて来た。漁師は眼をった。それはたしかに女房の姿であった。微白く見える顔も、肩の恰好も、背たけも、歩き方も、皆懐しい女房であった。漁師は嬉しさがぞくぞくとこみあげて来た。彼は沙丘を走りおりて近づいた。