Japanische Klassiker mit Furigana
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ありしまたけおのしによせて
有島武郎の死によせて
宮本 百合子
Lesen Sie 有島武郎の死によせて (ありしまたけおのしによせて) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.052 Zeichen · 7 Bildschirme
七月八日、朝刊によって、有島武郎氏が婦人公論の波多野秋子夫人と情死されたことを知った。実に心を打たれ、その夜は殆ど眠れなかった。
翌朝、下六番町の邸に告別式に列し、焼香も終って、じっと白花につつまれた故人の写真を見たら、思わず涙にむせび、声を押えることが出来なかった。彼の温容が心を打ったこと、並、人生の切なさ、恐ろしさ、平凡の底に湛えた切迫さ、真剣さを、一時に感じ、涙となったと云ってよい。
翌十日、自分は、動乱した心持のやや鎮まりを感じ、気分を更える為に髪を洗った。
今日(十一日)は風の強い、始めて蝉の声のする夏らしい日だ。
朝から仕事にかかる心組みで、食後机に向った。一回分の半以上迄無事に進んだが、そのうち又、心についてはなれない感動の余波で注意が、仕事から逸し勝ちになる。自分は総てこの一事によって経験した自分の心持ちを書いたら、幾分頭はしずまり、仕事につけるだろうと思いついて、此の筆を執ったのだ。
今、自分の心には、人間の畏ろしさがしみついて居る。彼の死には、種々不可解の点があり、それを理論的に批評するに困難がある。然し、彼が、性格的にあれ程殉情的なところと、理想主義、殆どストイックなところとのあったことに、今度のパニックは重大な関係を持つこと丈は争われない。