Japanische Klassiker mit Furigana
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とうかいどうごじゅうさんつぎ
東海道五十三次
岡本 かの子
Lesen Sie 東海道五十三次 (とうかいどうごじゅうさんつぎ) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.849 Zeichen · 28 Bildschirme
私たちは静岡駅で夜行汽車を降りた。すぐ駅の俥を雇って町中を曳かれて行くと、ほのぼの明けの靄の中から大きな山葵漬の看板や鯛のでんぶの看板がのそっと額の上に現われて来る。旅慣れない私はこころの弾む思いがあった。
まだ、戸の閉っている二軒のあべ川餅屋の前を通ると直ぐ川瀬の音に狭霧を立てて安倍川が流れている。轍に踏まれて躍る橋板の上を曳かれて行くと、夜行で寝不足の瞼が涼しく拭われる気持がする。
町ともつかず村ともつかない鄙びた家並がある。ここは重衡の東下りのとき、鎌倉で重衡に愛された遊女千手の前の生れた手越の里だという。重衡、斬られて後、千手は尼となって善光寺に入り、歿したときは二十四歳。こういう由緒を簡単に、主人は前の俥から話し送って呉れる。そういえば山門を向き合って双方、名灸所と札をかけている寺など何となく古雅なものに見られるような気がして来た私は、気を利かして距離を縮めてゆるゆる走って呉れる俥の上から訊く。
「むかしの遊女はよく貞操的な恋愛をしたんですわね」
「みんなが、みんなそうでもあるまいが、――その時分に貴賓の前に出るような遊女になると相当生活の独立性が保てたし、一つは年齢の若い遊女にそういうロマンスが多いですね」