Japanische Klassiker mit Furigana
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そめきちのしゅぼん
染吉の朱盆
国枝 史郎
Lesen Sie 染吉の朱盆 (そめきちのしゅぼん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.824 Zeichen · 35 Bildschirme
一
ぴかり!
剣光!
ワッという悲鳴!
少し間を置いてパチンと鍔音。空には満月、地には霜。
切り仆したのは一人の武士、黒の紋付、着流し姿、黒頭巾で顔を包んでいる。お誂え通りの辻切仕立、懐中手をして反身になり、人なんかァ殺しゃァしませんよ……といったように悠然と下駄の歯音を、カラーンカラン! 立てて向うへ歩いて行く。
切り仆されたのは手代風の男、まだヒクヒクうごめいている。手に包を握っている。
側に屋敷が立っている。立派な屋敷で一軒きりだ。黒板塀、忍び返し、奥に植込が茂っている。周囲は空地、町の灯に遠い。
その塀に添って、カランカラーン、武士はおちついて歩いて行く。
塀について左へ曲がった。
矢張り悠然、矢張り歯音、カラーンカラン! カラーンカラン!
また塀について曲がった途端、
「御用!」
捕手だ!
上がったは十手!
武士、ちっとも驚かなかった。
佇むとポンと胸を打った。
「へ――」
と捕方平伏した。
「半刻あまりそこにいろ」
いいすてて、またもカラーンカラン! 綺麗に歯音を霜夜に立て、そうして肩に満月を載せ、町の方へ行ってしまったのである。