Japanische Klassiker mit Furigana
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そめきちのしゅぼん
染吉の朱盆
国枝 史郎
Lesen Sie 染吉の朱盆 (そめきちのしゅぼん) von 国枝 史郎 (くにえだしろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 16.824 Zeichen · 35 Bildschirme
差し出したのは一面の朱盆。
「へい、さようで」
と醜い男じっと朱盆を眺めやった。
何んて微妙な深紅の色だ! 金短冊が蒔絵してある。そうして文字が書かれてある。
「こひすてふ」という五文字である。百人一首のその一つの、即ち上の五文字である。
男、ヒョイと令嬢を見た。と、チラチラと眼の中へ、狂わしい情熱の火が燃えた。
「ご免下さい」と行ってしまった。
ところがそれから数日経ち、同じようなことが行われた。
同じ場所で、手代風の男が、スポリと一刀に切られたのである。切り仆したのは同じ武士、矢張り悠然と立ち去ってしまった。かけつけて来たのは職人風の男、
「しめた!」というと躍り上がった。途端に右手が宙へ上った。そうしてそのまま逃げ去ってしまった。
切られた男の断末魔の声「あッ取られた、大事な朱盆……」
それも全く同じであった。
違った所も少しはある。
当然その夜は満月ではなかった。小雪がチラチラ降っていた。で、道がぬかるんでいた。
そこでもちろんカラーンカランと、下駄の歯音は響かなかった。
もっと重大な相違点がある。
(一)捕手がその夜は現れなかったこと。
(二)「しまった!」