Japanische Klassiker mit Furigana
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ざくろ
柘榴
山本 周五郎
Lesen Sie 柘榴 (ざくろ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.342 Zeichen · 25 Bildschirme
伊助は沓脱に腰をかけ、いかにも静かに茶を味わいながら、真沙の問に少しずつ答えた。
「さようでございます。この土地の生れではございません」松林のかなたを眺めるような眼つきで、区切り区切りこう云った。「ひとこと話せばひとことが身の恥でござります。家はかなりにやっておりました。土蔵なども三棟ばかし有ったものですが、やっぱりそういう運だったものですか、今では帰っても土台石ひとつ残ってはおりません。さようでございます、ずっと南のほうでございます」
そのときがきっかけになって、真沙はよく伊助を話し相手に呼んだ。彼は訊かれることはすなおになんでも話すが、すべてが控えめで、直接その事を語るより、脇のことで表現するという風だった。例えば笛にしても、「自分のはでたらめである。然し三年ばかり里神楽の仲間と一緒に暮したが、あの仲間には名人といってもいいような人間がいる」こういう云い方をするのである。妻もいちど貰ったが、うまくいかないで別れた。もちろん子供もない。故郷をとびだして以来は街巷から街巷を流浪して歩き、口には云えないような世渡りもした。まるで水の上に落ちた枯葉と同じで、ただ流れのまにまに生きて来たのである。