Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ざくろ

柘榴

山本 周五郎

Lesen Sie 柘榴 (ざくろ) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.342 Zeichen · 25 Bildschirme

Aozora Bunko

伊助はほとんど声にならない喉声で、眉をしかめながらこう囁いた。「年を取ったのですな。足を滑らせまして、……ばかな事です」

真沙は伊助の肩へ手を掛けた。そしてじっとその眼をみつめながら云った。

「本当のことを云って下さい。――あなた昌蔵どのではございませんか、あなたは松室昌蔵どのではございませんか」

伊助は口をあき眼を瞠った。その大きくみひらかれた眼を、光りのようにすばやく、なにかのはしるのが感じられた。真沙は両手で彼の肩を掴み、顔と顔を重ねるようにして呼びかけた。

「仰言って下さい。傷は重うございます。これが最期になるかも知れません。本当のことをひと言だけ聞かせて下さいまし。あなたは真沙の良人でございましょう――」

伊助はじっとこちらを見た。黙って、かなりながいこと真沙の眼を見上げていたが、やがて静かに頭を左右へ振った。そして、ごく微かな、殆んど聞きとれないような声で、「いい余生を送らせて貰いました」と囁いた。

後の月の招宴はとりやめにした。伊助のなきがらを埋めた庭の隅の、灌木に囲まれた日溜りに、よく鵯が来ては鳴いていたが、間もなく雪が来て凡てを白く掩い隠してしまった。