Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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かきのたね

柿の種

寺田 寅彦

Lesen Sie 柿の種 (かきのたね) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.202 Zeichen · 139 Bildschirme

Aozora Bunko

ところが、この犬が時々不思議な鳴き方をする。人間が何か泣きごとでもいっているかと思うような声を出すかと思うと、首でも締めて殺されかかっているのかと思うような悲鳴を上げる。そうかと思うとかんしゃくが起こってくやしがってきゅうきゅういっているような奇妙な声を出す。だんだん気をつけてみるとそういう不思議な鳴き方をするのは、ほとんどきまって豆腐屋のラッパが遠くから聞こえてだんだん近よって来るときか、またはたぶん豆腐屋であろうかチリンチリンと鈴を鳴らしながら前を通るときであるらしい。どういうわけか知らないが、そのラッパや鈴の音を聞くと、堪えがたい恐怖か憤懣がこの犬の脳神経中枢をいらだたせるものと思われる。

生理学のほうで「条件反射」という現象がある。この犬の場合はあるいはその一例かもわからない。まだ小さい時分に何かしら同じような音響のする場所でたびたびひどい目に遇った経験の記憶が、この動物の脳髄に焼き付けられたように印象されているのかもわからない。

それともまた、この犬は何か耳の病気があって、ある一定の高さの音がとくに鋭く病的にその聴覚を刺戟するのかもしれない。