Japanische Klassiker mit Furigana
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かきのたね
柿の種
寺田 寅彦
Lesen Sie 柿の種 (かきのたね) von 寺田 寅彦 (てらだとらひこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 70.202 Zeichen · 139 Bildschirme
曙町より(十二)
(昭和七年十二月、渋柿)
曙町より(十二)
今日神田の三省堂へ立ち寄って、ひやかしているうちに、「性的犯罪考」という本が見当たったので、気まぐれの好奇心から一本を求めた。
それから、暇つぶしに、あの脊の高い書架の長城の城壁の前をぶらぶら歩いているうちに、「随筆」と札のかかった区劃の前に出た。
脊の低い、丸顔の、かわいい高等学校の生徒が一人、古風な薩摩絣の羽織に、同じ絣の着物を着たのが、ひょいと右手を伸ばしたと思って、その指先の行くえを追跡すると、それが一直線に安倍君著「山中雑記」の頭の上に到達した。
おやと思っているうちに、手早く書架からそれを引っこ抜いてから、しばらく内容を点検していたが、やがて、それをそっと元の穴へ返した、と思うと、今度は、すぐ左隣の「藪柑子集」を抽き出して、これもしばらくページをめくっていたが、やがてまた元の空隙へ押しこんだ。
そうして、次にはそれから少しはなれて、十四、五冊くらいおいた左のほうへと移って行った。
正月の休みに郷里帰省中であったのが、親父からいくらかもらって、ややふところを暖かくして出京したばかりらしいから、どちらか一冊ぐらいは買うかな、と思って見ていたが、とうとう失敬して行き過ぎてしまった。