Japanische Klassiker mit Furigana
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かき
柿
山本 周五郎
Lesen Sie 柿 (かき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.565 Zeichen · 25 Bildschirme
「何誰さまがおいでになりますの」
「牧野だよ」
兵馬は袴を抛り出しながら、
「あいつ矢張り話があったんだ、飲み過ぎてきっかけがなくなったらしいぞ、案外気の弱いところがあるからな」
「それでは急いでお支度を致しましょう」
「客間を少し飾ったらいいだろう、牧野は花が好きだからなにか活けるさ、香もいて置く方がいいな、それから……酒は抜きだがまるで無しという訳にもいくまい」
「いけませぬ」
小房は叱るように遮った。
「兄上さまはお盃を持つともうお終いですもの、今夜は一滴もなりませんわ、牧野さまが御迷惑をなさる許りですから」
「よし、幾らでも牧野の贔屓をしろ、どうせ……」
云いかけて兵馬はぶるると首を振った。
「まあ宜い、おまえに任せる」
「その代り御馳走は沢山致しますわ」
小房はいそいそと立って行った。
ゆうべの今日である、辰之助がどんな話を持って来るか、むろん彼女にも察しはついていた。……いよいよ自分の運命が定るのだ。
小房は恥しいほど胸が顫えるのを感じながら、辰之助の好きな白菊の一輪を萱の中に活けた。柱懸けの一節切にはあけびの蔓をした。そして香の薫がしっとりと客間の空気にしみわたって、辰之助が訪れてきたときには、心を籠めて薄化粧を終っていた。