Japanische Klassiker mit Furigana
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かき
柿
山本 周五郎
Lesen Sie 柿 (かき) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 12.565 Zeichen · 25 Bildschirme
三
「まあ、あんなことをまだ覚えていらっしゃいまして」
「家では小言を食ったことのない方ですからよく覚えていますよ、……青い実を採るような者には熟してからも遣らぬ、たしかそう云って怖い眼をしたでしょう」
「でも熟してから差上げましたわ」
「今度だけは堪忍してあげる、きつい眼で睨みながらそう云われたのを覚えていますよ。……あれ以来、柿を手にする度に、眤と見ていると貴女がどこかで『堪忍してあげる』と云っているような気がしたものです」
「ほほほほ」小房はあまく笑い声をたてた。
「恥かしゅうございますわ、わたくしずいぶんおてんばでございましたから」
「今夜の薙刀も当分忘れられないことでしょう」
「もうお赦し下さいませ、わたくし」
小房の声を遮って、
「誰だ、何者だ」
と明いている雨戸の隙から兵馬が喚きたてた。
「拙者だよ、……辰之助だ」
「なんだ牧野か、今時分なにをしているんだ」
「なに、柿を採っていたんだ」
辰之助は小房の方へ振返った、小房は肩をすくめてそっと笑った。
兵馬はまだ寝呆けているのか訳が分らぬという様子でなにやら喚いていた。
三
「どうした、気分は直ったか」
「うん、どうも……」