Japanische Klassiker mit Furigana
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くわのきものがたり
桑の木物語
山本 周五郎
Lesen Sie 桑の木物語 (くわのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.815 Zeichen · 79 Bildschirme
見てまわろう、おれは今年は、初めて、――自分が六万三千石の領主だということに気づいたよ」
悠二郎はびっくりした。やっぱり血というものは争えないと思い、ただ面白がっているだけの自分にてれて、独りで赤くなった。
「そのときがきたら、おれは自分で藩政をみる、まだそのときではない、だがそのときがきたら、――悠二郎、おまえと新泉がおれの両の腕になるんだぞ」
奥からは強硬な話が幾たびもあった。いつかは表の寝所へ、生母の清香院が自分で迎えに来たそうである。そのときは悠二郎は宿直にいなかったが、清香院の泣き声が焼火の間まで聞えたという。――勘右衛門はすでに養育係を解かれ、老職の席だけはあるが、隠居づとめのような気儘な身の上で、そのころはもうあまり外出もせず、家で暢気に酒を飲んでいるというふうだった。それでも悠二郎が頼むと奥御殿へいって呉れた。……医者の室井準斎は奥や他の老職たちの間に挾まって、かなり苦しい立場らしかったが、これも勘右衛門と口を合わせて、正篤の健康を楯にねばりとおしたらしい、そして結局のところ延期ということに定ったのであった。
その年の十二月も下屋敷へいった。