Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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くわのきものがたり

桑の木物語

山本 周五郎

Lesen Sie 桑の木物語 (くわのきものがたり) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 39.815 Zeichen · 79 Bildschirme

Aozora Bunko

――醒めていればもちろん、酔っていても、ついすると正篤のことを想っていた。まだ信太郎といっていたころ、初めてこちらから話しかけ、屋敷境へ魚をしゃくいにいった。笠木塀を乗り越えるときの泣きそうな顔や、浅草界隈の話をしたとき、さも羨ましそうに、

――そこへは若もいけるの。

こうきいた顔つきもありありと思いだせる。

下屋敷へゆくようになって、うまくぬけ出して遊んだ日々のこと、見る物すべてが珍しく楽しそうで、いきいきと笑ったりとびまわったりした姿など、なにもかもが昨日のことのように新しい。

「だがみんな過ぎ去ったことだ、みんな夢をみたようなものだ、おれはこうして舟仙の二階に酔いしれている、そしてもうむかしの悠二郎じゃあない、みじめに忘れられ、捨てられてしまった人間だ」

彼は幾たびもあの病間の一夜を思いだした。正篤が自分の短命であることを知って、初めてそれを告白したときのことである。

――自分は日鑑をみた、わが家では五代まえから男子がみな早世する、おそらく自分も二十二三までの命だと思う。

冷やかな、そして棘のある、絶望的な調子であった。悠二郎は胸のつぶれる思いで、こみあげる涙を抑えながら、死ぬことなど忘れて生きることを考えるように、万一のときに貴方ひとりは死なさぬ、自分もあの世へ供をする、そのときがくるまでは生き甲斐