Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
田辺の小父さんばかりでなく、河岸の樽屋までも関係するという新狂言の興行が復た始まっていた。久松橋にさしかかった。若い娘達の延びて来たには更に驚かれる。あの髪を鬘下地にして踊の稽古仲間と手を引合いながら河岸を歩いていた樽屋の娘が、何時の間にかおばさんの御供もなしに独りで田辺の家へ訪ねて来て、結構母親の代理を勤めて行くほどの人に成った。捨吉は人形町への曲り角まで歩いた。そこまで行くと、大勝も遠くはなかった。あの御隠居さんの居る商家の奥座敷で初々しい手付をしながらよく菓子などを包んで捨吉にくれた大勝の大将の娘が、最早見違えるほどの姉さんらしい人だ。稀に捨吉が小父さんの使として訪ねて行って見ると、最早結い替えた髪のかたちを羞じらうほどの人に成った。揃いも揃って皆急激に成長って来た。春先の筍のようなこの勢は自分の生きたいと思う方へ捨吉の心を競い立たせた。
その日は、捨吉は芳町から荒布橋へと取って、お母さんに別れて来た時のことを胸に浮べながら歩いて行った。捨吉兄弟のことを心配して女の一人旅を思立って来たというお母さんが、やがて復た独りで郷里の谿谷の方へ帰って行くことも思われた。