Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
てはいないことに成った、との話もあった。そうだ。捨吉が学校の休みの日に帰って行って、大川端でその話を聞いて来る前に、田辺の家の方へ顔を出したら、小父さんも留守、姉さんも留守の時で、唯お婆さんの烈しい権幕で言ったことが何事も知らずに出掛けて行った捨吉を驚かした。
「お金を寄しさえすれば、それで可いものと思うと大きに違いますよ」
あのお婆さんが怒った言葉の意味を、捨吉は兄の下宿まで行って初めて知った。
高輪の学窓の方で、捨吉が自分の上に起った目上の人達の争闘を考えて見る頃は、その年の秋も暮れて行った。空想は捨吉の心を大勝とした紺の暖簾の方へ連れて行って見せ、あの正面の柱に古風な「もぐさ」の看板の掛った大きな店の方へ連れて行って見せた。空想はまた彼の心をあの深い商家に育った可憐な娘の方へ連れて行って見せた。仮令兄の言うように、小父さんにどんな目論見があろうとも、そのために小父さんを憎む気にはどうしても成れなかった。あべこべに、弟の独立をそれほどまで重んじてくれたという兄の処置に対しては感謝しながらも、猶それを惜しいと思うの念が心の底に残った。
捨吉は自分の空想を羞じた。