Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
その心から復た彼は店の入口の方へ行って、周どんの側に腰掛けた。こうした雑貨店では客の種類もいろいろだ。白の股引に白足袋、尻端折のいそがしい横浜風の風俗の客や、異人の旦那を連れた洋妾風の女の客なぞが入って来る度に、捨吉は自分の腰掛を離れて、店のものの口吻を真似た。
「いらっしゃい――」
と力を籠めて呼んで見る捨吉は、店頭に並べてある売物の鏡の中に自分の姿を見た。皆角帯、前垂掛で、お店者らしく客を迎えている中で、全くの書生の風俗が、巻きつけた兵児帯が、その玻璃に映っていた。実に、成っていなかった。
須永さんが行き、周どんが行き、入れ替りに真勢さんが来た。須永さんも、周どんも、それぞれ話を残して行った。須永さんは、一時手伝いに来ていた色白でまるまると肥った女と。周どんは、房州出の下女と。
真勢さんのような大勝の帳場を預かる人が、あの東京の御店の方を置いて来たということは、すこし捨吉を驚かした。この雑然紛然とした空気の中で、伊勢崎屋へ来て就く奥のチャブ台の前で、十年一日のような信仰に生きて来た真勢さんがそれとなく捧げる食前の祈祷に、人知れず安息日を守っているということは、更に捨吉を驚かした。