Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
その英訳の文学史は前にも一度ざっと眼を通して、その時の感心した心持は菅にも話して聞かせたことがあった。捨吉は日頃心を引かれる英吉利の詩人等がテインのような名高い仏蘭西人によって批評され、解剖され、叙述されることに殊の外の興味を覚えた。「人」というものに、それから環境というものに重きを置いた文学史を読むことも彼に取っては初めてと言って可い位だ。ある時代を、ある詩人によって代表させるような批評の方法にも酷く感心した。例えば、詩人バイロンに可成な行数を費して、それによって十九世紀の中のある時代を代表させてあるごとき。
何時の間にか捨吉は小父さんの店へ手伝いに来た心を忘れた。一度読み出すと、なかなか途中では止められなかった。英訳ではあるが、バイロンの章の終のところで、捨吉は会心の文字に遭遇った。
「彼は詩を捨てた。詩もまた彼を捨てた。彼は以太利の方へ出掛けて行った、そして死んだ」
と繰返して見た。
商法上の用事で横浜へ来たという捨吉の兄は夕方近く伊勢崎屋へ顔を見せた。兄は横浜へ来る度に、必ず寄った。小父さんの留守と聞いて、その日は店の手伝いをしたり、棚の飾りつけを見て廻ったりした。