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Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

横浜を去って、自分の小さな生涯を始めて見たいと言出した。さしあたり翻訳の手伝いでもして見たいと言出した。それにはあの先輩の経営する雑誌社から月々九円ほどの報酬を出そうと言って来ているとも附添して小父さんに話した。

「俺はまた、行く行くこの伊勢崎屋の店を貴様に任せるつもりでいたのに――」

と小父さんはさも失望したらしい表情を見せて言った。

しかし書生を愛する心の深いこの小父さんは一概に若いものの願いを退けようとはしなかった。何等の報酬を得ようでもなしに、唯小父さんの手伝いをするつもりで、その一夏の間働いた捨吉の心をも汲んでくれた。同時に、小父さんが手を替え品を替えしてその日まで教えて見せたことも、到底若い捨吉の心を引留めるには足りないことを悲しむようであった。

「へえ、捨吉にも九円取れるか」

と終には小父さんも笑って、彼の願いを許してくれた。

恩人夫婦をはじめ、真勢さん、新どん、吉どん、その他馴染を重ねた店の人達に別れを告げて、捨吉が横浜を去ろうとする頃は、大勝から手伝いに来た連中もそろそろ東京の空が恋しく成ったと言っていた。捨吉はしばらく逢わなかった菅や足立を見る楽みをもって東京の方へ帰って行った。