Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
その写真の中には、菅、足立、捨吉の外に、もう一人の学友がいずれも単衣ものに兵児帯を巻きつけ、書生然とした容子に撮れていた。
菅は、膝の上に手を置き腰掛けながら写っている足立の姿を捨吉と一緒に見て、
「僕の家に下宿してる朝鮮の名士が、この中で一番足立君を褒めたっけ。この人は出世しそうだ、そう言ったっけ。見給え、この写真には僕も随分面白く撮れてるじゃないか――まるで僕の容子は山賊だね」と濃い眉を動かして笑った。
菅が自から評して「山賊」と言ったのは、捨吉自身の写真姿の方に一層よく当嵌るように思われた。捨吉は友達の言葉をそのまま自分の上に移して、「まるでこの髪は百日鬘だ」とも言いたかった。我ながら憂鬱な髪。じっと物を見つめているような狂人じみた眼。長いこと沈黙に沈黙を重ねて来た自分の懊悩が自然とその写真にまで上ったかと思うと、捨吉は自分で自分の苦んだ映像を見るさえ厭わしかった。
菅の家へ来て見る度に、捨吉には自分とこの学友との間の家庭の空気の相違が眼についた。下町風な生活のかわりに、ここに女の手ばかりで支えらるる家族的な下宿がある。アーメン嫌いな人達のかわりに、ここには挙って基督教に帰依する一家族がある。