Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

捨吉が日頃愛読する英吉利の詩人の書いたものの中から、あるいは抄訳を試みたりあるいは評釈を試みたりして、それを吉本さんの雑誌に寄せる度に、青木からは友愛の情の籠った手紙や葉書をくれた。青木が芝の公園内へ引移る頃には短い月日の交際とも思われないほど、捨吉はこの年長の友達に親しみを増して行った。

ある日、捨吉は新しい住居の方に青木を見ようとして出掛けて行った。その時の彼は吉本さんが彼の為に心配してくれた新規な仕事に就いて、一小報告をも齎して行った。

早い春の陽気は復た回って来ていた。温暖い雨は既に一度か二度通過ぎた後であった。霜の溶けた跡にあらわれた土を踏んで行って、捨吉は芝の公園内から飯倉の方へ降りようとする細い坂道のところへ出た。都会としては割合に高燥な土地に、林の中とも言いたいほど樹木の多いところに、青木の新居を見つけた。岡の傾斜に添うて一軒の隠れた平屋があって、まだ枯々とした樹木の枝はどうかすると軒先に届くほど延びて来ていた。

青木は漸く自分の気に入った家が見つかったという顔付で捨吉を迎えた。狭くはあるが窓の明るい小部屋でも、古くはあるが草庵のような静かさを有った屋根の下でも、皆捨吉に見せたいという顔付で。