Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
「白ばっくれるない」
という声を浴せかけて通った。
その足で、捨吉は講堂の前から緩慢な岡に添うて学校の表門の方へ出、門番の家の側を曲り、桜の樹のかげから学校の敷地について裏手の谷間の方へ坂道を下りて行った。一面の藪で、樹木の間から朽ちかかった家の屋根なぞが見える。勝手を知った捨吉は更に深い竹藪について分れた細道を下りて行った。竹藪の尽きたところで坂も尽きている。彼はよくその辺を歩き廻り、林の間に囀る小鳥を聞き、奥底の知れない方へ流れ落ちて行く谷川の幽かなささやきに耳を澄ましたりして、時には御殿山の裏手の方へ、ずっと遠く目黒の方まで独りで歩きに出掛けたことがある。四辺には人も見えなかった。誰の遠慮も無いこの谷間で彼は堪らなく圧迫けられるような切ない心を紛らそうとした。沈黙し鬱屈した胸の苦痛をそこへ泄しに来た。張り裂けるような大きな声を出して叫ぶと、それが淋しい谷間の空気へ響き渡って行った。
一羽の鳥が薄明るく日光の射し入った方から舞い出した。彼はそこに小高く持上った岡の裾のような地勢を見つけた。その小山へも馳け登って、青草を踏み散らしながら復たそこで力一ぱい大きな声を出して怒鳴った。