Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
捨吉がまだ市川を知らないように、岡見はまだ青木を知らなかった。捨吉は岡見に青木を紹介することを約した。
「そのうち弟にも逢ってやって下さい」と岡見が言った。岡見には清之助という弟があって、市川と同じようにこの下町から高等学校へ通っているとのことであった。
岡見の家を出て、少年の時からの記憶の多い下町の空気の中を牛込の方へ帰って行く頃には、いろいろ捨吉の胸に思当ることがあった。岡見の話のはじで、あの涼子こそ、捨吉には未知の友ではあるが鎌倉以来よく噂の出る市川の意中の人であると分って来た。静かな茶の間で聞いて来た琴の音はまだ捨吉の耳についていた。あの音が涼子を語った。涼子は何処か大勝の娘に共通したところのある細腰で繊柔な下町風の娘で、岡見のような兄の心持もよく解るほどの敏感な性質を見せていた。それに涼子は一頃麹町の学校へも通ったことがあるとかで、磯子とは親しく、勝子をもよく知っているということが、他人で無いような懐かしみを捨吉に有たせた。捨吉は市川を知る前に、先ず涼子の方を知った。その意味から言っても、あの怜悧な娘が択んだ未知の青年に逢いたかった。
下宿へ戻って見ると、岡見に逢って話して来たことが一層勝子に対する捨吉の恋の意識を深くさせた。