Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

吉本さんを通して岡見君の心持をあの人まで話して貰ったところが、その返事が、どうしてもお磯さんです。先生としては何処までも尊敬する。しかし、その人を自分のラヴアとして考えることはどうしても出来ないと言うんだそうです。そうなって来ると岡見君の方でも余計に心持が激して来て……教場なぞへ出ても、実に厳然として生徒に臨むという風だそうです……」

こう話し聞かせる市川の広い額は蒼白く光って来た。市川はまたずっと以前の岡見をも知っていてあの軽い趣味に満足していた人が今日のような涙の多い文章を書く岡見に変って来たことを捨吉に話した。そういう話をする調子の中にも、市川は若者と思われないほどの思慮を示した。子供と大人がこの人の蒼白い額や特色のある隆い鼻には同時に棲んでいた。やがて市川は岡見と一緒に編輯したという例の小さな雑誌の秋季附録を捨吉の前に取出した。二人とも好きな詩文の話がそれから尽きなかった。

再会を約して捨吉は市川の許を離れた。彼の胸は青木や、岡見兄弟や、市川や、それから菅、明石のことなぞで満たされた。同時に、磯子、涼子、勝子、もしくは青木の細君のことなぞが一緒になって浮んで来た。