Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらのみのじゅくするとき
桜の実の熟する時
島崎 藤村
Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme
身に覚えのある捨吉は玉木の小母さんの言ったことを考えて、わざわざ少年をはじしめるようなそういう苛酷な大人の心を憎んだ。
ある日、捨吉は二階の玉木さんの部屋へ上って行って見た。次第に玉木さんも捨吉と忸々しい口を利くように成ったのである。殊に捨吉が基督教主義の学校で勉強していることや、聖書を熱心に読んで見ていることや、浅見先生の家にも置いて貰ったことがあるという話を知ってから、ちょいちょい玉木さんの方から捨吉の机の側へ覗きに来て、時には雑誌なぞを貸してくれと言うように成ったのである。
「捨さん、まあ御話しなさい」
と玉木さんは言って、さも退屈らしく部屋を見廻した。
その二階は特別な客でもあった時にあげる位で、平素はあまりつかわない部屋にしてあった。楠の木目の見える本箱の中には桂園派の歌書のめずらしくても読み手の無いような写本が入れてある。長押の上には香川景樹からお婆さんの配偶であった人に宛てたという歌人らしく達者な筆で書いた古い手紙が額にして掛けてある。玉木さんはここへ世話に成ってから最早その部屋の壁も、夏の日の射した障子も見飽きたという様子で、小父さんから借りた一閑張の机の前に寂しそうに坐っていた。