Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらのみのじゅくするとき

桜の実の熟する時

島崎 藤村

Lesen Sie 桜の実の熟する時 (さくらのみのじゅくするとき) von 島崎 藤村 (しまざきとうそん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 111.569 Zeichen · 222 Bildschirme

Aozora Bunko

後から後から何か湧いて来る。時には、どうしてあんなことが言えたろうと、互に話し合ったことを後で考えて見て、ビックリすることさえもある。

足立が前に言ったことは、ふと捨吉の胸を通過ぎた。「何故、君はあんなに一時黙っていたんだ」と足立が尋ねたが、そう直截に言ってくれるものはこの友達の外に無い。捨吉はその時の答をもう一度探して見た。「僕は自分の言うことが気に入らなく成って来た……一時はもう誰にも口を利くまいと思った……そうすると独語を始めた、往来を歩いていても何か言うように成った……とても沈黙を守るなんてことは出来ない……」

あの時、足立は快活な声で笑った。そしてこんなことを言った。「なにしろ岸本にも驚くよ。折角あんなに書いた物を焼いて了うなんて男だからねえ」

眼前にあることと済んで了ったこととが妙に混り合った。捨吉は足立や菅と一緒に居て、一人の友達の左から分けた髪が眼についたり、一人の友達の黒い羽織の色や袴の縞なぞが眼についたりした。何処までが「今」の瞬間で、何処までが過去ったことだか、その差別をつけかねた。

髭の赤い舎監が部屋の扉を開けて見廻りに来た。