Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
此処が桜島である。海沿いの道を約一里あるいて、袴腰という処に部隊がある。眼をあげると、空は晴れ上って、朱を流したような夕焼であった。私の心もほっと明るくなるような感じであった。気軽く兵隊たちにも話しかけ、そして歩き出した。雨上りの、鮮烈な緑をたたえた樹々が道のくねりにしたがって次々につづいた。農家らしい家に立ち寄り、梨を沢山買った。
茶褐色の、かたい小さな梨であった。気が付くと、群れ立つ樹々の間に、此の野生の梨はあちこちに茶褐色の実を点じていた。
「昨夜の女が言った梨が、これか」
汁液の少ない、甘味に乏しい実を噛んではき散らしながら、私はそう思った。
日が落ちた。満山に湧く蝉の声も衰えた。薄明の中、私達は部隊に着いた。道から急角度にそそり立つ崖に、大きな洞窟を七つ八つも連ね、枯れた樹などで下手な擬装をしている。ドラム缶などが、壕の入口にいくつも転がっていた。そして兵隊が壕を出たり入ったりしている。皆、年取った兵ばかりであった。静かな濤の音がした。
当直将校に会い、七名分の送り状をわたし、私はそこで六名と別れた。通信科の兵が来て、それと一緒に居住区に歩き出した。