Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
火
皮膚の動きが収まって、彼はやっと口をきいた。今度は女の指先があられのように、頭皮に当った。
「どうして判る?」
「かんですたい。月ん一度くらい、そぎゃん人にぶつかりますばい。特徴はみんな齢のわりに、足の甲が薄かですもん」
「そうか。拐帯者の足は薄いか。いい勉強になったな」
「そいで明日、同僚か上役の人が迎えに来るっとでしょう。まっすぐ帰った方がよかね。阿蘇にゃ登らんで」
得意そうな、言いさとすような声を出した。彼はその声に、ふと憎しみを覚えた。
「だから登るんだよ」
「なして?」
「最後の見収めに。いや、最後はまずいね。他に何か言葉が――」
「しばし別れの――」
「うん。そうだ」
女の笑いに和そうと思ったが、声には出なかった。指のあられはやんだ。指圧はこれで終ったのだ。
五郎は上衣を引寄せ、紙幣とともに、鹿児島で買った時間表を取出した。
「九時半の準急があるな。これにしよう。切符売場で待っている」
火
九時三十四分の準急。ぎりぎりまで待ったが、女は来なかった。五郎は風呂敷包みを提げ、決然と改札口を通った。座席はわりにすいていた。汽車は動き出した。
〈やはり来なかったな〉