Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

宇治がそれについて視線を動かすと、ニッパの半壁を隔てて奥にも一つ部屋があるらしく、そこは樹々の梢が低く垂れているのか蒼黒く澱んだ色であった。その床にも黒くひとつの物体が横たわっていた。宇治はそちらに近づいて行った。近づくとそれもやはり兵隊であったが、宇治はぎょっとして立ちすくんだ。その男の顔から頭にかけておびただしく蝿がたかっていたのである。

(死んでいるのか?)

立ったままじっと見つめていると、床に垂れた手が極めてゆるやかに動き、そして顔のあたりに近づき、微かに蝿を追う仕草をした。蝿はぱっと飛び立ちぶんぶんなきながら、そしてそこらを飛び廻ったり柱に止ったりした。まだ死んでいるのではなかった。顔は刻んだように頬骨が立ち、ほとんど土の色であった。伸ばした脚にゲエトルがゆるみ、処々にぶざまな凹みを見せていた。生きているうちから蝿はたかるのか。宇治は口の中ににがく唾がたまるのを意識しながら眼をそむけた。男の顔には再び蝿が戻って止り始めるらしかった。所属を離れた兵隊、ことに見失った兵隊がこのように密林をさまよっているうちに飢餓のためあちこちに倒れて行くものらしかった。