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Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

何事も起らなかった。道はそこで二叉に分かれ、一方は崖に沿って司令部へ行き、右に折れれば再び暗い密林に入る。赤く剥けた樹の肌であった。高さは七八十米もあるかと思われたが、枝はそぎ落したように千切れ、頂き付近に僅か残る葉も白く頽れた色であった。宇治はほっと肩を落してふり返った。疲れが一時に背に積み重なって来た。

「道はこれか」

拳銃を腰にしまいながら宇治は低い声で訊ねた。高城は蒼い顔をしていたが、だまってうなずいた。

「何を妙な顔をしているんだ」

宇治は笑おうとしたが、笑いにはならなかった。表情がわずか歪んだだけであった。高城もへんに硬ばった顔を宇治からそむけた。二人はそしてそのまま歩き出した。

花田が居るという部落は此処から三粁ほどである。道はやや下り坂となり、どこかで流れる山水の音がした。一歩一歩花田中尉の処に近づいて行く。そう思ってもそれは何か現実感がうすかった。宇治をとらえる感じは別のものであった。その感じを胸に探りながら、彼は一歩一歩靴先を草叢に入れた。蔓草が足にからんで歩き難かった。

先刻のことのために高城の気持が硬化したことは、その怒ったような顔付でも判ったが、また荒々しい足どりでもうかがわれた。