Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
奥の方の薄暗いあたりにいるらしい男の濁った声で、
「どなたですか。こいつは気が狂っているのです」
ごそごそ這い出して来たのを見ると、兵隊のようではない。四十がらみの顎の張ったするどい目付の男である。まぶしいのか片手を額にあてながら宇治を見た。
宇治も身構えながら油断なく男を見つめた。
「花田中尉の小屋はどこか」
男は彼が将校であることを認めたらしかったが、別段態度を改めるということもなかった。ゆっくりした声で言った。
「花田中尉ですか。中尉殿は居ません」
「居ない」
「ええ、居ないのです」
男は上半身が裸である肉付きの良い分厚な肩であった。鼠色の洋袴に包まれた脚をだるそうに土間におろした。
宇治は振り返った。高城は入口から顔だけ入れていた。
「花田中尉の小屋に行って来い。もし居たら宇治中尉が連絡に来たと言って来い」
そして彼は再び男に向き直った。男は冷淡な表情で高城が出て行くのを眺めていた。
「此の部落にいる筈だ」
「先刻出発されました」
「出発した?」
彼はほっと心が崩れるのを感じ、二三歩土間に入って行った。狂った女はきょとんとした顔を上げて宇治を眺めたが、ふいにごろりと横になり脚を立てた。