Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

海軍さんと一緒に命からがら逃げて来たんだ」

「此処に長いこと居るんだね」

「もう四五十日も居る」

「食べ物は?」

「花田中尉さんが持って来た薬品を、下の部落で米と替えた」

「まだ残りがあるんだな」

「あるもんか」

男は急にぎらぎらする眼になって、宇治を見ながらも一度繰り返した。「米など残っているもんか」

宇治は黙って男の分厚な肩を眺めた。そして女を指さした。

「このひとは身寄りかね」

「うん」あいまいな口調であった。「身寄りと言う程でもない」

「知合いか」

「まあそんなもんだ」

「何故一緒に東海岸に行かなかったんだ」

宇治は何かいらだつ気持があって同じ質問を繰り返した。密林の中から風が立つらしく、さああと葉ずれの音が小屋の外にたかまって来た。土間に落ちる光斑がちらちらと赤く乱れた。風が行ってしまうのを黙って聞いていた。男は壁に背をもたせて低い声で言った。

「東海岸って、何処に逃げたって同じさ。おれはもう逃げ廻るのがいやになったんだ。何処に行ったって死ぬときは死ぬさ。おれは此の女と一生此処で暮すよ」

「食糧はどうするんだ」

「食糧などどうでもなるさ。花田さんみたいに逃げたって同じよ。