Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
どこかで錯綜して居るのだが、その結び目が見つからないのだ。先刻も女を射てとは言わなかった。逃亡の最初から何かしら狂っているのではないか。ことごとく彼の思うようには動いていなかったのだ。彼は顔の皮膚を河風にさらしながら、段々混乱し始めて居た。も少しで判りそうな気持だが、それも一息で踏み込めないのだ。ただ兇い予感がしきりに彼を脅かしつづけた。
(得体の知れないものが何処かにいるのだ!)
その予感が、今朝離隊する時から彼の心をじっと掴んで離さなかったことを、彼は今初めて鋭く意識でつかんでいた。
「陸軍の将校が、今日此処を通らなかったかあ」
手を口にあて、高城が土手の上から河に向って叫んでいる。磧の水の流れている辺で、兵隊らしい男が二人洗濯をしているのだ。服装から判ずると海軍の兵隊である。ここらは海軍の占拠地区であった。高城の声が風に飛ぶので判然としないらしい。何か立ち上って答えるらしい様子であったが、それも聞き取れない。二人で笑い合う気配であった。海軍の兵は一旦崩れかかると、陸軍の兵よりも無頼の感じが濃くなるのだ。一人が腕を上げて、下流の方の土手を指すらしかった。