Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
「なるほどね」
そう言ったけれども、納得したわけではない。フィルムなんてものは、鉄道便か何かで直送するものであって、行商人のように売り歩くものではなかろう。そんな感じがする。五郎は丹尾の顔を見た。この顔には見覚えはない。髪にはポマードをべったりつけている。チョビ髭を生やして、蝶ネクタイをつけている。太ってはいるが、顔色はあまり良くない。頬から顎にかけて、毛細血管がちりちりと浮いている。暑いのに、かなりくたびれたレインコートを着ている。五郎は訊ねた。
「映画というと、やはり、ブルーフィルムか何か――」
「冗談じゃないですよ。そんな男に僕が見えますか?」
その時傍の窓ガラスの面に、音もなく黒い斑点が出来た。つづいて二つ、三つ。翼を流れるものが、風向きの関係か何かで、粒のまま窓ガラスにまっすぐ飛んで来るらしい。爆音のため聞えないけれども、粒はヤッと懸声をかけて、飛びついて来るように見えた。二人は黙ってそれを眺めていた。やがて最後尾から、スチュワーデスが気付いたらしく、急ぎ足で近づいていた。丹尾は顔を上げて訊ねた。
「これ、何だね?」
「潤滑油、のようですね」
「このままで、いいのかい?」