Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

よく出て来るのは、軍歌の一節であった。

「……北風寒き千早城」

それにつづいて、

「楠公父子の真心に、鬼神もいかで泣かざらん」

楠公父子が『暗号符字』に、いつか彼の中ですり変えられている。暗号符字の真心に鬼神もいかで泣かざらん。彼は苦笑いとともに思う。これがおれの正体じゃないか。今まで不安を忘れたり、避けたりして、ごまかして来たんじゃないか。おれだけじゃなく、みんな。

「もう始まっていますよ。今日はすこし血を採りましょう」

医師がそう言った。注射管の中にたまる血の色を見ながら、五郎は同じようなことを考えていた。しかし、幻覚のことは、どうなるのか?

「さあ。そろそろ出かけましょうか」

丹尾は盃を伏せて立ち上った。徳利の三分の一は、五郎が飲んだ。勘定は丹尾が払った。その勘定を払う手付き、札入れの厚さなどを、五郎はじっと見ていた。丹尾は腕時計をちらと見た。

「汽車の時間はどうかな。駅で待たせられるかな」

「おれは車で行くよ」

五郎はそっけなく答えた。

「待たせられるのは、いやだ」

五郎は先に外に出た。航空事務所の隣が、ハイヤーの営業所になっていた。そこに入って行った。