Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
空港から乗って来た車の運転手が、車体をぼろ布で掃除していた。五郎の姿を見て、細い眼で笑いかけた。
「枕崎まで行くかね」
「行きますよ。どうぞ」
運転手はドアをあけた。五郎は座席に腰をおろした。丹尾は店からまだ出て来ない。運転手が乗り込んで来た。
「一人ですか?」
うなずこうとしたとたん、のれんを分けて丹尾があたふたと出て来て、五郎の傍にころがり込んだ。
「ぼくも乗せてもらいますよ。汽車は時間的に都合が悪いらしい」
丹尾は運転手の横にトランクを投げ込んだ。運転手が答えた。
「あれは開通したばかりで、日に何本も出ないのです」
抑揚に訛りめいたものがあるが、一応標準語であった。運転手という職業の関係もあるが、ラジオやテレビのせいもあるらしい。さっきの空港の受付の女の口調もそうであった。
〈戻るのか〉
と五郎は思った。車はさっき乗って来た街衢を、逆にしごいて走る。五郎は忙しく地図の形を頭に浮べていた。二十年前のここらは、すっかり爆撃にやられて、骨組みだけの建物と瓦礫だけの町であった。電線は地に垂れ、水道栓が音を立てて水を吹き上げていた。人通りは――暗闇で長いこと据え放しにしたカメラの影像のように、動かないものだけが残り、人間の姿は全然消失していた。