Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

「湯之浦温泉でっね」

返事も待たずに車は動き出した。五郎はだんだん腹が立って来た。うかうかと乗り込んだ自分自身に対してだ。

「お客さあ」

運転手がハンドルを切りながら言った。

「湯之浦に泊っとですか?」

「まだはっきり決めてない」

「泊ってあんまを呼んなら、佐土原ちいう爺さんを呼んでやって下さい」

「なぜ?」

「あたしの縁者でしてね」

五郎は黙っていた。間もなく湯之浦に着く。黙ったまま、代金を支払った。貧寒な温泉宿の一軒をえらび、部屋に入る。着換えして温泉につかると、あとはもう何もすることがない。焼酎を注文して部屋に坐り、じっと飲んでいる。その彼の心を、遠くから脅して来るものがある。

〈なぜおれが佐土原というあんまを呼ばなくちゃいけないのか?〉

あの少年と浜で出会った時から、妙な段取りがつけられて、うまくそれに乗せられたような気がする。自分の意志と関係のない、何か陰謀めいたものが、煙のように彼を取巻いている。彼はしばらく食膳のものをつつきながら考えていた。考えるというより、ともすればこみ上げて来る不安感を、つぶそうつぶそうとしていた。彼は呟いた。

「状態がどうもよくないな」