Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
男は黙って、五郎の頭から足先まで眺めた。職業的な視線でなめ廻した。
「ぼくは久住五郎というものだ。お内儀さんに聞けば、判ると思うが――」
「そりゃムリたい」
「なぜ?」
「うちにゃこれまで何千何万のお客さんが、出入りしなさった。あんたが覚えとっても、お婆さんが覚えちょるとは限らんばい。そぎゃんじゃろ。あんたさんはいつ頃のお客さんな?」
「二十七、八年前、学生時代だ」
五郎はハンカチで額を拭いた。
「会えば判ると思うんだがね」
「そぎゃんいうち来るお客さんも、時々おらすばってん、なかなか会えんばい」
眺め廻すのをやめて、男はまっすぐ五郎の顔を見た。どの程度の客か、判定し終ったらしい。
「なぜ? 病気なのかい?」
「うんにゃ。死んなはった。十年ばかり前ですたい」
額をぐいと押された感じで、五郎は黙った。こめかみがびくびく動くのが判る。何で早くそれを言わないのか。やがて男が心配そうに言った。
「気分がわるかと?」
「いや。別に」
「そればってん、顔が――」
「この旅館気付に、東京からわたしに金が送って来る」
ハンカチをしまいながら、五郎はかすれた声を出した。
「それまでここに泊りたいんだ。