Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
泊れるだろうね」
「ん。まあね」
気のなさそうな返事をした。
「泊めんのが、商売だもん」
男は手を打って女中を呼んだ。
「お荷物は?」
「あ。今はいいんだ。市内見物をして来るから、部屋だけ取っといて呉れ」
「そぎゃんですか。そんならお待ちしとりますけん」
五郎は横町を出て、街路に出る。やはり顔がこわばっている。荷物は持たないし、服もきちんとしていないし、靴もよごれている。上客ではない。言われなくても、自分で知っている。しかしあの番頭の客あしらいは、横柄だ。まるで泊らせないために、応対しているようではないか。
〈金はいくら残っているのかな〉
五郎は感情を制しながら、ポケットに手をつっ込み、指先で勘定した。眼で見ないで、指で数えられるほどの少額である。老練な客引や番頭になると、顔や服装を見ただけで、客の持ち金をほぼ正確に言い当てるという。
「ふん」
五郎は肩を落し、三分間ほど曲り角に佇立し、街の様子をにらんでいた。昔よく出歩いた街だが、その頃の雰囲気が残っているような、また見覚えのないような感じがする。度の合わない眼鏡をかけた時の違和と不快がある。これが初めての風景なら、旅情もあるだろうが、過去に翳を引いているので、具合が悪いのだ。