Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
しかしそれがかつての宿とは、断定出来ない。彼の記憶に灼きついているのは、特異な提灯の色だけであって、あとは模糊としている。二階にはすりガラスの窓があった。その時彼は窓を細目にあけて、道を見おろしていた。そして視線がぴたりと松井教授に合ったのだ。どんなつもりで、教授はその窓を見上げたのだろう。
〈こんな具合に――〉
五郎は立ち止り、二階の窓を見上げる。するとそこに一つの顔があった。出窓に腰をおろして、一人の男が道を眺めている。とたんに視線が合った。すると五郎は呪術にかかったように、眼が動かせなくなった。顔を上に向けたまま、そろそろ横に動いて、電柱につかまった。
それは学生らしい。もちろん見知った顔ではない。頭髪を長めに伸ばし、上半身は裸である。その顔は初めいぶかしげな表情をたたえ、しだいにとがめるような顔に変って行く。視線をそらすきっかけをうしない、五郎はじっとその変化を見守っていた。
〈まずいな。これは意味ないな〉
こんなやり方で現実と結び合おうとしても、無駄だ。それは一昨日坊津で経験ずみのことである。結びつくわけがない。その時ふっと顔は、窓から消えた。