Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

五郎は最後の一匙を食べ終って、少女に訊ねた。少女は答えた。

「阿蘇ん大雨で流されち来た流木が、子飼橋の橋脚にせき止められち、水の行くとこがのうなって、横にはみ出したとです。大江へんは建物ごとごっそり削られたとです」

「ひどかでしたばい」

婆さんは口をとがらせた。口から泡を吹くような調子で、

「あいからあたしゃリューマチにかかって、まだ直りきらんとです」

十年以上前のことを、老女は昨日の出来事のように熱っぽく語る。その情熱は、どこから来るのだろう。あの建物の二階にいる青年は何者か。それを調べて写されたネガを取戻したい。そう思ってこの店に入ったのだけれども、洪水話に巻き込まれて、その気はなくなってしまった。写したければ、勝手に写したらいいだろう。そんな気になっている。五郎の顔はあの青年にとって、意味も何もありゃしないのだ。

「そいから川幅も広うなりましたもんねえ、子飼橋も鉄骨でつくりかえられました。今度洪水があってん、家は流されてん、橋だきゃ流れんちゅ皆の噂ですばい」

「そうかね」

彼はしばらく白川べりの素人下宿に住んでいたことがある。三十年前のことだ。そこを見る気持になって、彼は立ち上った。