Japanische Klassiker mit Furigana
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さくらじま
桜島・日の果て・幻化
梅崎 春生
Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme
部屋の隅で二三人が低い濁った声で歌いだした。
九千余人の泥棒が
玉屋の二階に忍び込み
反物取って逃げて行く
逃げれや逃げれ何処までも
ぱちぱちと手をたたいた。盃を手にもって茶わんや皿をたたく。歌が尻きれとんぼになってしまった。節が無いような変な歌なので、何だか此の宴会にふさわしかった。部屋の中空に淀んでいた煙草の煙の集りが、流れるように動き出した。お次の番だよお次の番だよと大声で喚き出した。壁に倚りかかって、大声でおばさんと話していた天願氏が何を思ったか突然立ち上った、手で一座を制するようなしぐさを繰り返しながら、
「歌!」と言った。
いまから歌いますという意味らしかった。何しろぐにゃぐにゃして立って居るのも大儀らしい。皆が静まったら、低い太い声で悠長な節まわしで歌いだした。二人かながなと芝居んちちゃびら。愛の雨傘に思いかくち。情ぬ雨やさちかゆてく。
二分間位かかってこれだけ歌い終えたら、しんかんとなっていた席がどっと湧き立って大騒ぎになった。ちゃり、ちゃりちゃらんと茶わんが鳴る。
その時、モナリザのおばさんが急にすわりなおすのが見えた。何かを思い出したような顔をしながらマントを肩からずり落した。