Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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さくらじま

桜島・日の果て・幻化

梅崎 春生

Lesen Sie 桜島・日の果て・幻化 (さくらじま) von 梅崎 春生 (うめざきはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 169.810 Zeichen · 345 Bildschirme

Aozora Bunko

ああ、何もかも風のようだ! 私は私の胸の空洞を吹き抜ける風の悲しい密度を感じながら、こう思った。底知れぬ絶望感が私をおそった。忽ち私の心の中の何ものかが、祈拝の姿勢をとった。私は歩き出した。今から私は蓬莱町の私の部屋に戻ろう。あの汚ない部屋を立派に掃除して、明日から学校に出よう。平凡な学生でもいい。愚かな学生でもいい。規律正しい生活と、一秒一秒が退屈の分子をふくまない立派な生活をしよう。自分の生活をきびしく律する高邁な精神を本当に求めよう。私は熱い涙を流しながらそう思っていた。

しかしその夜遅く、私は不思議な力にひかれて、再び泥竜館の玄関に立った。私は靴をそっと脱ぎ、音を立てないように廊下を歩き、天願氏の部屋に忍び寄った。天願氏はすでに眠っていた。私はその顔をじっと見つめた。額にふつふつと寝汗の粒が並び、髪毛が四五本そこにへばりついていた。苦しそうな寝顔であった。思わず私はぐっと胸がせまって来た。私の胸の中にあった、あらゆる憎しみや悲しみや、そうしたものを、此の束の間の感傷が暫く押し流したのだ。生きて行くことはいい。生きて行くことはいいことだ。